
2024年、ワインの世界が静かに、しかし確実に変わり始めています。
世界中のワイン生産量が過去60年で最低水準に落ち込み、消費量も減少、ブドウ畑の面積も縮小の一途。
これは一過性の出来事ではなく、ブドウ栽培・醸造・ビジネスの三位一体に起こる、歴史的な転換の兆しかもしれません。
本記事では、データと化学、マーケット動向の3つの視点から、いまワイン界に何が起きているのかを深掘りします。
1.世界のワイン統計から見えた「異常値」
2024年、国際ブドウ・ワイン機構(OIV)が発表した世界統計は、ワイン業界にとって警鐘ともいえる内容でした。
- ✅ ワイン生産量:225.8百万ヘクトリットル(過去60年で最も低い水準)
- ✅ 消費量:214.2百万ヘクトリットル(前年比-3.3%)
- ✅ 栽培面積:7.1百万ヘクタール(前年から-0.6%)
- ✅ ブドウ総収穫量:72.5百万トン(ワイン用が約70%)
このデータからわかるのは、供給・需要・栽培環境すべてが縮小傾向にあるということ。ワインが「余っている」のではなく、むしろ「減っている」のです。
2.気候変動がブドウの生育に与える影響
これらの統計の裏には、気候変動の深刻な影響があります。
- 🌡 高温・干ばつ・霜害・雹害が北半球・南半球ともに深刻化。
- 🍇 開花時期が早まり、フェノール成熟と糖成熟のバランスが崩れる。
- 🍷 酸度の低下により、ワインのスタイルそのものが変化。
- ❄️ 特にフランスやチリ、南アフリカでは、収量が大幅に減少しました。
近年、ブドウ品種や栽培地を移動する「ワインマイグレーション」も進み、ボルドーのメルローが北へ、イングランドのスパークリングが注目されるなど、ワイン地図の書き換えが進行中です。
3.醸造家はどう対応しているのか?
気候とブドウの変化は、醸造技術の革新も加速させています。
- 🧪 **酸補正(酒石酸添加)**が標準化。自然な酸が足りない年が増加。
- 🔬 低アルコール技術(逆浸透膜、スピニングコーンなど)が多用される。
- 💨 香り成分の保持・抽出にも高度な技術が求められる。
これらの技術革新は、かつては一部の“ナチュラルワイン否定派”の道具とされていましたが、**現在では品質維持のための「当たり前」**となりつつあります。
4.ワインビジネスはどこへ向かうのか?
市場面でも明確な変化があります。
- 📉 ワイン消費は特に若年層で減少傾向。ノンアル・低アル志向が加速。
- 🇺🇸 アメリカではワイン消費量33.3mhl(前年比‑5.8%)と大きく落ち込む。
- 📈 一方、**アジア市場(日本、韓国、台湾)**ではプレミアム層の伸びが注目。
- 🧳 ワインツーリズム、ワイン×健康、ワイン×SDGsなどの新しい文脈づけが求められている
つまり、いまのワイン業界は、「つくり方」と「売り方」の両面で再定義のフェーズにあります。
✒️ 結論:「2024年を知らずして、ワインを語るなかれ」
ワインとは本来、気候・土壌・文化・経済が織りなす複雑な生き物です。
そして2024年という年は、ワインのその「生き物」としての性質が、最も露わになった年でもあります。
次回以降では、今回のデータを踏まえ、
- 「気候変動で失われるブドウ品種」
- 「酸度と酒石酸の科学的解説」
- 「醸造家が語る“今こそ必要な技術”」
など、より深く掘り下げていきます。
ワインの本質に“deeper into”する旅、始めてみませんか?
引用
OIV(国際ブドウ・ワイン機構)
State of the World Vine and Wine Sector 2024 (PDF)Gambero Rosso
Global Wine Consumption at a Historic Low