
ワイン界の「気持ち悪さ」について以前書いたが、その正体は「中身ではなく記号を飲んでいる」ことにある。
ラベルの格付けや、誰が評価したか。そんなノイズをすべて削ぎ落としたとき、最後に残るのは「造り手の執念」だけだ。
今日、私が提示する答えは一つ。 Kisvin Pinot Noir 2022(キスヴィン・ピノノワール)。 価格は18,500円。日本ワインとしては決して安くない。だが、このワインには、記号ではない「本物」が宿っている。
2013年からの軌跡 Kisvinが初めてのヴィンテージをリリースしたのは2013年のことだ。 わずか10年余り。ワインの歴史からすれば瞬きのような時間で、彼らは世界のトップソムリエたちが指名買いするまでの地位を築き上げた。
これは奇跡ではない。 栽培責任者・荻原康弘氏の「土への偏執的なまでのこだわり」と、醸造責任者・斎藤まゆ氏の「緻密な科学的アプローチ」がぶつかり合って生まれた、必然の結果だ。
樹齢17年と技術の融合 テクニカルデータを見てほしい。平均樹齢17年。 日本でピノ・ノワールをこれほどの年月維持し、高品質な実を成らせることがどれほど過酷な挑戦か。荻原氏は、一文字短梢という仕立てを駆使し、日本の湿潤な気候の中でピノ・ノワールのポテンシャルを極限まで引き出している。
そして斎藤氏は、その結晶を16ヶ月という長い時間をかけて、一分の隙もないエレガントなワインへと昇華させた。注いだ瞬間に溢れるサクランボやバラの香りは、決して「魔法」ではなく、計算し尽くされたプロフェッショナルの仕事の証明だ。

18,500円という投資
18,500円という価格。これを「高い」と感じるなら、まだ記号のワインを飲んでいればいい。 だが、もしあなたが「嘘のない本物」に触れたいなら、この1本は人生の基準を塗り替える投資になる。
マナーも、語るべき知識も必要ない。 14℃で完璧に管理されたこのワインを、ただ、真っさらな心で味わってほしい。 そこには、ワイン界の喧騒を忘れさせるほどの、静かな感動が待っているはずだ。





