• Kisvin Pinot Noir 2022 ―― その先にある答え


  • ワイン界の気持ち悪さ


    ただのお話

    ワインの業界でスノビズムを感じませんか?

    誤解しないでほしいのは、私は知識そのものを否定しているわけではないということです。ワインの歴史や製法を知るのは、それはそれで楽しい。ただ、私が「きもい」と感じるのは、その知識やマナーを他人を値踏みしたり、(知らないうちに)自分の優位性を誇示したり、排他的な雰囲気を作るための道具にしている人たちです。

    知識は、ワインをより深く楽しむためのスパイスであって、壁を作るためのレンガではない。この「知識を武器にする態度」こそが、私が心底うんざりしているスノビズムなんです。

    実際のお店でもYoutubeでも、私は、「うっ、、、きも。」と思うことが多々ある。


    飲食の業界に20年弱居ましたが、特に自分でワインバーをやった時にワインと他の飲み物との違いに、

    「なんで?ワインだってただの飲み物!嗜好品!」と何度言ったことか。。。

    それは、お客さんから「ワインは難しい」と言われるとき。
    ワインを飲むだけのことに、難しいもくそもない。

    そんな時によく言っていたのが、

    「ラーメン食べるのは、難しいですか?
    ラーメンも色々あって醤油・豚骨・味噌・家系・二郎系、、、難しくないですか?」
    って。

    • ワインはよくわからない
    • ワインは難しい
    • ワインの味がわからない
    • ワインはあまり飲まないから・・・

    こういう言葉を聞くたびに、ワイン業界は、間違えた方向に行っているのではないかと思う。

    私は、ワインをもっと気軽に多くの人に飲んでもらいたい。
    (ただ、現状、ワインの価格を考えると厳しいとしても。。。)

    無駄に壁を作ってしまってると思う。

    それが、最初の気持ち悪さにつながるのだ。

    「グラスの持ち方は・・・」

    「ワインの選び方は・・・」

    はっきり言ってどうでもいい。
    星付きのレストランやマナーにうるさい人たちの前など、気を付けた方が良い時があるのは確かだ。

    しかし、Youtubeでも見てもらいたい。
    ワイン系の人たちは、着飾って、小難しいワイン用語を使って、ワインを勧めているけど、ちょっとワインを飲もうと思った人は、ああいう人たちの中に入っていこうと思うのか?

    自分も小綺麗な格好して、蘊蓄を語って、グラスを離さずぐるぐる回し(これは、私もやるけど。。。(笑))、ワインをわかっているような顔をして、本当に美味しくワインを飲めるのだろうか?

    じゃあ、どうすればいいのか。

    私がワインバーをやっていた時、お客さんに「ワインは難しい」と言われたら、まず「好きなように飲んでください」と言っていました。

    • グラスの持ち方? 好きなように持てばいい。熱が伝わるのが気になるなら、ステム(脚)を持てばいい。それだけ。
    • 選び方? ラベルが気に入った、名前の響きがいい、産地が気になる。それで十分。プロは、その「なんとなく」を深掘りして、次に繋がる一本を提案するのが仕事です。
    • マリアージュ? 好きなものを好きなように合わせるのが一番。ポテチとシャンパン?最高じゃないですか。

    ワインを飲む上で、本当に大切なのは、誰と、どんな気分で、何を話しながら飲むか、これに尽きます。

    極端な話、嫌いな人と、嫌な話をし、何か嫌な思いをしながら飲むワインは、不味い。いくら美味しいワインでも。

    だから、私は声を大にして言いたい。

    「おいしいワイン」を飲むのではなく、「美味しくワイン」を飲むことを勧めた方がいいのでは?

    あなたの気分を上げてくれる、あなたの会話を弾ませてくれる、あなたの人生を豊かにしてくれる。

    ワインは、ただの「最高の脇役」でいいんです。主役は、いつだって、それを飲むあなた自身なんだから。

    美味しくワインを飲みませんか?

  • 【AIソムリエ告白】酸化の学習を終えた人が辿り着く「最強の自己投資」Coravinレビュー


    レビュー

    ソムリエ視点

    酸化コントロール

    ソムリエは酸化を知るべき。ではCoravinは必要か?結論:少量提供や比較試飲をするなら投資価値あり

    要約:Coravin(コラヴァン)はコルクを抜かずにワインを注げるシステム。アルゴンガスでボトル内を置換し、酸素接触を最小化します。これにより、少しずつ提供しても味の劣化速度を抑えられるため、バー/レストラン/自宅の「ハーフグラス運用」「飲み比べ」に向いています。

    1. なぜ必要?—現場の課題を3つ解決

    • ① ワインロスの抑制:開栓後に余らせて酸化で捨てる…を減らせます。
    • ② 比較試飲の再現性:同じボトルを数日に分けて比較しても味が安定。
    • ③ 「温度×酸化管理」で体験価値UP:提供温度(白10–12℃/赤14–18℃)を守りつつ、酸化を抑えると、翌日以降も香り・味の再現性が高く、学習(飲み比べ)が進みます。

    2. 安全性と仕組み(かんたん)

    アルゴンは不活性ガスで、ワインと反応せず、ボトル内の酸素と置換して酸化を抑えます。(補足:日本国内では2019年1月に食品添加物としての利用が認められています。)

    3. 投資対効果(例)—数で見る

    • ワインロスの削減:20本 × 平均原価2,500円 × ロス10%5,000円/月 の損失を抑制できる可能性。
    • 売上の機会創出:グラス売りの品目を増やせる=客単価の上振れ余地(例:高単価銘柄を少量提供)。
    • 教育効果:同じボトルを複数日に分けて比較でき、学習・コンテンツ化(動画/記事)が捗る。

    ※上記は一例。実際の効果は客数・メニュー構成・オペレーションで変動します。

    4. 使い分けの目安(ラインナップ)

    • Timeless(スティルワイン用):通常の静止ワイン。長期保存に向く。
    • Sparkling(スパークリング用):専用ヘッドで泡を維持。スパークリングにはTimelessは不可

    5. 実運用のヒント

    • 提供温度を先に決める:白10–12℃/ロゼ10–12℃/赤14–18℃。
    • 最初の注ぎは控えめに:グラス1杯分ずつ。注ぎ切らないことで酸素の侵入を抑える。
    • 保管姿勢:基本は横置き(コルク乾燥防止)。冷蔵庫は振動の少ない棚へ。

    6. FAQ(よくある質問)

    Q. どれくらい保てますか?
    • 繊細な白・ロゼ:目安 2〜4週間
    • しっかりした赤:目安 4〜8週間
    • 酒精強化(ポート等):目安 8〜12週間
    • スパークリング:専用のCoravin Sparkling使用で 最大4週間 を目安

    ※保管温度・ワインのスタイル・ボトル残量で前後します。最適温度を守ると持続性が高まります。

    Q. 味は変わりませんか?
    時間とともに香りの開き方は変化しますが、通常の開栓より変化が緩やかです。比較試飲の再現性が高くなります。
    Q. 家飲みでもメリットは?
    「今日は半グラスだけ」「明日別のボトルと比較」など、少量×複数日が実現します。飲み過ぎ防止にも。

    7. 結論

    開栓後のロスを抑え、比較試飲と学習の再現性を高める—少量提供・飲み比べをする人ほど、Coravinは“体験価値への投資”になると考えます。

    プロの自己投資:Coravinの価格を確認する

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  • グラス選びの目的【AIソムリエ解説】プロが10年愛用する究極のワイングラス。テイスティング能力が劇的に向上する理由グラス選びの目的

    グラス選びの目的【AIソムリエ解説】プロが10年愛用する究極のワイングラス。テイスティング能力が劇的に向上する理由グラス選びの目的


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    執筆:AIソムリエ (WSET L3 / 元ワインバーオーナー)

  • 樽と非樽で何が変わる?香り・味・温度を30秒で体感する方法


    結論:樽ワインは「香りのコート」、非樽は「素の果実」。違いは感覚の問題ではなく、分子温度で説明できます。この記事では、科学の要点をサクッと学び、30秒で試せるテイスティング手順と、実際に体感できる比較セットまでを一気通貫でご案内します。

    1. 樽と非樽の違いは“分子”で起きる

    樽由来:バニリン/オークラクトン

    • バニリン:バニラやトーストの香り。新樽比率や焼きレベルで強弱が変わる。
    • オークラクトン:ココナッツ、スウィートスパイスのニュアンス。アメリカンオークで感じやすい。
    • 樽熟が長いほど、香りは複雑化し、口当たりもまろやかになりやすい。

    非樽(ステンレス主体):果実・酸・ミネラルが直線的

    • 容器から香りが付与されないため、品種本来の第一アロマ(柑橘・白い花など)がクリアに届く。
    • 酸(酒石酸・リンゴ酸)の骨格がはっきり感じられ、味わいはシャープに。

    MLF(マロラクティック発酵)と乳酸

    • リンゴ酸→乳酸に変換される過程で、酸の印象が丸くなる。
    • 樽×MLFあり=クリーミー、非樽×MLFなし=キリッと、という対比が明確。

    2. 30秒テイスティング手順(今日から使える)

    1. 温度を合わせる:白は10–12℃(樽ありは11–12℃、非樽は10–11℃)
    2. 順番:樽あり → 非樽 →(あれば)軽い樽の3点比較
    3. 香りの焦点:バニリン/ラクトン(樽) vs 果実・花・柑橘(非樽)
    4. +1℃実験:樽ありを1℃上げると、印象がまろやかに変化

    3. 温度が変える体感(かんたん早見表)

    提供温度香りの出方味わいの印象
    9–10℃果実控えめ/ミネラル鮮明骨格シャープ、キレ重視
    10–11℃果実と酸のバランス良好非樽に最適、直線的
    11–12℃樽香がきれいに立つ口当たりまろやか、厚み

    ※同じワインでも1℃で印象が変わります。温度計の使用がおすすめ。

    4. 樽×非樽の比較表(要点だけ)

    項目樽あり非樽
    香りバニラ・トースト(バニリン/ラクトン)柑橘・白い花など品種本来
    味わいふくよか・まろやかシャープ・直線的
    MLFあり=乳酸でやわらかなし=酸がクリア
    相性料理バター・ナッツ・鶏白身魚・柑橘・ハーブ

    5. よくある質問(FAQ)

    Q1. Brut(辛口)なのに甘く感じるのは?
    A. 温度が高い/酸が低い/泡圧が弱い等で甘さが前に出ることがあります。温度を1℃下げて比較を。

    Q2. グラスは何を選べば?
    A. 基準はチューリップ形。香りの集約が早く、再現性が高いです。

    Q3. 家で再現するときのポイントは?
    A. まず温度管理。次に順番(樽→非樽→軽樽)。最後に+1℃実験です。

    6. もっと早く、確実に体感したい方へ

    この記事の内容をすぐ試せるよう、樽×非樽“体験標本”セットを用意しました。

    7. 関連:スパークリングの残糖量(Dosage)早見表

    • Brut Nature:0–3 g/L(極辛口)
    • Brut:0–12 g/L(標準辛口)
    • Demi-Sec:32–50 g/L(中甘口)

    より詳しい表と解説はPDFでご覧ください。


    監修:Wine & Spirits Academy|合言葉は「WINE IS SCIENCE」

    同一生産者で「樽の強さ」を比べる:Kisvin 樽比較 2本セット

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  • 樽発酵×バトナージュ:澱が作るクリーミー食感の正体


    ワインの熟成工程で、「澱(レーズ/lees)接触」と「樽内撹拌(バトナージュ)」が織りなす“クリーミーな食感”は、単なる風味の変化以上の意味を持ちます。今回は、澱由来の成分、樽の物理化学作用、そしてバトナージュがもたらす構造的変化を、ソムリエ試験対策にも役立つ視点で整理します。


    1. 澱(Lees)とは何か?——酵母・葡萄残渣の役割

    澱とは、主に発酵終了後に残る酵母細胞・タルト酸塩・葡萄の微細固形分などの沈殿・浮遊物を指します。The Australian Wine Research Institute+2ウィキペディア+2
    澱接触(“sur lie”)やそれを活用するバトナージュでは、酵母の自食(自溶/autolysis)によって分解された成分がワインへ移行し、質感・風味を変化させます。ウィキペディア+1

    主なメカニズム

    • 酵母細胞壁から放出される**マンノプロテイン(mannoproteins)・多糖類(polysaccharides)**がワイン中に溶出→口当たりが滑らかに。WineMakerMag.com+1
    • 澱が酸素を吸収・消費する還元的な表面を持ち、酸化抑制・保存安定化に寄与。The Australian Wine Research Institute+1
    • タンニンやアントシアニンなどポリフェノールと相互作用し、渋味・収斂味を軽減する効果。Winemakers Research Exchange

    2. 樽発酵(Barrel Fermentation)とは?——木の影響+物理変化

    樽発酵とは、発酵をタンクではなく木樽内で行う、あるいは発酵後すぐ樽に移して熟成を始める手法で、ワインに特有の香味・構造を付与するために用いられます。rockymountainbarrelcompany.com+1
    木樽は次の特徴を持ちます:

    • オーク由来のバニリン、ラクトン、タンニン(特にエラジタンニン)がワインに移行
    • 樽の板隙間・目地からの微量酸素供給(微小酸化)によるタンニン軟化・色安定化
    • 蒸発・揮発損失による濃縮効果

    これらの作用が、澱接触による構造変化と組み合わさることで、より「クリーミーで重みのあるスタイル」へと発展します。


    3. バトナージュ(Bâtonnage)の真意——澱を撹拌し、作用を最大化

    バトナージュは、澱が沈澱した後、長棒(バトン)で撹拌し澱を浮遊・再接触させる技法です。frankfamilyvineyards.com+1
    その目的・効果:

    • 澱・ワイン接触時間を増やし、酵母成分の溶解・移行を促す
    • 澱層の厚み・還元リスクの低減(澱が厚くなると硫化物などの欠点発生リスクあり)ウィキペディア+1
    • 樽内での撹拌により微小酸化の均一化・酸素分布改善

    実務上は、清酒「シュール・リー」的な白ワイン(例:シャルドネ)で多用されますが、赤ワインでも同様に口当たり・構造改善を目的に用いられます。WineMakerMag.com


    4. “クリーミー食感”をもたらす構造変化

    ◾ マンノプロテイン・多糖類の働き

    酵母細胞壁から放出されるマンノプロテイン・β-グルカン等は、ワイン中のタンニンと結合し、唾液タンパク質との結合を妨げることで収斂味・渋味を抑え、滑らかな舌触りを生みます。Winemakers Research Exchange+1

    ◾ 樽と澱の協働

    樽発酵・バトナージュにより、オーク起源の揮発成分(バニリン、トースト香)・微小酸化作用・澱溶出成分が融合。結果として「バター/クリーム」「ナッツ/ブリオッシュ」「オークスパイス」という複雑な香味と厚みが現れます。

    ◾ 安定性と熟成ポテンシャル

    澱接触とバトナージュにより、ワイン中のタンパク・酒石共析成分が安定化され、清澄・濾過時のトラブルを軽減。The Australian Wine Research Institute また、溶出多糖類がタンニン・色素と作用することで熟成耐性を高めるケースも報告されています。Winemakers Research Exchange


    5. リスクと管理ポイント

    • 澱が厚く沈降層を形成し、そのまま放置すると還元臭(硫化水素・メルカプタン)やオフフレーバー発生リスクがあります。撹拌・酸素管理が重要。ウィキペディア+1
    • バトナージュ頻度・タイミングにより、酸化・還元バランスが崩れる可能性。撹拌直後の空気導入は過酸化・アセトアルデヒド生成の原因。The Australian Wine Research Institute
    • 樽材料・トースト度・新樽比率・澱の性状(粗澱 vs 微澱)により効果が変動。実務では細澱(fine lees)主体の管理が望まれます。WineMakerMag.com

    6. スタイル別プレイブック

    目的スタイル実施内容備考
    フルボディ白(例:樽発酵シャルドネ)樽発酵+澱接触+月1回バトナージュ乳製品香+厚み+熟成耐性
    精緻な白(例:白ブルゴーニュ)澱接触のみ/軽撹拌フレッシュ感と複雑性の両立
    赤ワイン(例:ピノ・ノワール/メルロー)樽熟成中に細澱+月1–2回撹拌滑らかさ確保+タンニン軽減

    【樽発酵×バトナージュ】を感じるワイン

    項目詳細
    産地アメリカ、カリフォルニア州 ナパ・ヴァレー
    ブドウ品種シャルドネ
    製法樽発酵・樽熟成、バトナージュ(月2回)、マロラクティック発酵 100%
    Amazon商品ページナパ・ハイランズ シャルドネ

    おすすめポイント

    カリフォルニアのナパ・ヴァレーという、樽熟成シャルドネの銘醸地から選んだ一本です。樽発酵と樽熟成を組み合わせ、さらにマロラクティック発酵(MLF)を100%行っている点が最大の特徴です。

    •リッチでクリーミー: MLFにより酸味がまろやかになり、月2回のバトナージュによる澱の旨味が加わることで、非常にリッチで厚みのあるクリーミーな口当たりを実現しています。

    •複雑な風味: 洋ナシや完熟リンゴの爽やかなアロマに加え、樽からくるバニラやナッツ、バターの風味が層をなし、口全体に広がる複雑な味わいが楽しめます。

    •王道スタイル: 樽熟成シャルドネの王道ともいえるスタイルで、ブログのテーマを深く理解するのに最適な、飲みごたえのあるワインです。


    まとめ

    「樽発酵×バトナージュ」は、澱の化学的・物理的作用と木樽構造・酸化還元環境を融合させ、香味・口当たり・安定性の三位一体を目指す醸造技法です。効果を引き出すためには、澱の管理・撹拌タイミング・樽設計が不可欠。ソムリエ試験対策としても、「澱→マンノプロテイン→滑らか」「撹拌=バトナージュ=オーク+微小酸化」という流れを理解しておくと実践的です。


    参考文献

    🔮 次回予告

    「マイクロ・オキシジェネーション:酸素がつくる“なめらかさ”と色の安定」

    ワイン熟成に欠かせない“酸素”。
    しかし、その量とタイミングを誤ると、酸化・劣化の引き金にもなります。
    次回は、樽やタンクを問わず応用されるマイクロ・オキシジェネーション(微小酸化)の原理と、
    それがどのようにして赤ワインの色調・タンニン・口当たり
    に影響を与えるのかを科学的に解き明かします。

  • 樽熟成とMLF(乳酸発酵)の相乗効果——リンゴ酸→乳酸で、香りと安定性はどう変わる?


    樽熟成(オーク)とMLF(乳酸発酵)は、それぞれ単独でもスタイルを大きく左右しますが、同時・連続して起こると相乗効果が生じます。 本稿では、オーク由来成分+微小酸化と、リンゴ酸→乳酸変換・ジアセチル生成の交点を、最新知見と実務の観点で解剖します。

    1. MLF(乳酸発酵)の基礎

    MLFは主に Oenococcus oeni がリンゴ酸を乳酸に変換する反応で、酸が丸くなり、pHがわずかに上がります。 クエン酸代謝によりジアセチル(バター香)が生成することもあり、香味設計の鍵となります。

    2. 樽熟成の要点:成分移行と微小酸化

    • 成分移行:バニリン、オークラクトン、トースト由来成分、エラジタンニンが香味に寄与。
    • 微小酸化:樽板の透過性により酸素が微量供給され、色安定・タンニン軟化が進む。

    3. 樽 × MLF の相乗効果

    3-1. 香り:ジアセチルとオーク香の融合

    ジアセチル(約2mg/L以上で検知)は、低濃度では複雑さ、高濃度では明瞭な“バター香”に。 バニリンやトースト香と重なることで、ブリオッシュやナッツ様のリッチな香りが形成されます。

    3-2. 口当たり:酸の柔化とテクスチャー増幅

    MLFで酸味が穏やかになり、微小酸化によるタンニンの重合でなめらかな舌触りが生まれます。 特に樽内で同時進行するMLFは、澱との接触により一層クリーミーな質感をもたらします。

    3-3. 安定性:MLF完了+樽熟成で微生物安定化

    MLFを完了させることで瓶内再発酵のリスクを防止。樽内では酸素管理・SO₂濃度が安定し、健全な熟成が促されます。

    4. ジアセチル香のコントロール

    • 澱接触(On Lees):酵母澱がジアセチルを還元し、香りをソフトに。
    • 同時発酵(コイノキュレーション):一次発酵中のMLFはジアセチル生成が抑えられる。
    • SO₂管理:過剰添加はMLF停止・香気阻害の原因となるため注意。
    • 発酵タイミング:一次後のMLFは香りを強調、同時進行は控えめに仕上がる。

    5. 樽要素の設計パラメータ

    • 新樽比率:新樽が多いほど香味成分が豊富になり、MLF後の丸みと調和。
    • トースト度:中〜強トーストは香ばしさと甘やかさを付与。
    • 接触材:チップやステイブは香味付与は可能だが、酸化還元効果は木樽が優位。

    6. 醸造スタイル別プレイブック

    ① クリーミーで“バター香”の白ワイン

    • 一次発酵後にMLFを実施(同時発酵は避ける)
    • 新樽比率高め・中強トースト
    • 澱接触を短めにして香りを残す

    ② フレッシュで引き締まった白ワイン

    • MLFを抑制(冷却・SO₂管理)
    • ステンレスタンク主体で酸保持
    • 澱接触を長めにして口当たりを補う

    ③ 赤ワイン:構造と丸みの両立

    • MLF完了で安定性確保
    • 樽内微小酸化でタンニン軟化・色安定
    • 補酒・撹拌で還元抑制と酸化防止のバランスを取る

    まとめ

    • 樽熟成:香味成分+酸化還元コントロールで複雑性を生む。
    • MLF:酸味の柔化と乳酸香で丸みと厚みを形成。
    • 両者を組み合わせることで、香り・舌触り・安定性の三要素が同時に進化する。

    次回予告:「樽発酵×バトナージュ:澱が作るクリーミー食感の正体」へ。

  • MLF(乳酸発酵)を味と安定性の両面から解剖する


    —— リンゴ酸→乳酸で何が変わる?


    リード文

    ワイン醸造における“第2の発酵”、それが**マロラクティック発酵(MLF)**です。
    果実に含まれるシャープなリンゴ酸が、よりまろやかな乳酸へと変化することで、
    味わい・香り・安定性のすべてに影響を及ぼします。
    今回は、MLFの科学的プロセスと味覚的変化を、上級者向けに掘り下げます。


    1. MLFとは何か?—— 化学反応の正体

    マロラクティック発酵(Malolactic Fermentation, MLF)は、
    **乳酸菌(Oenococcus oeni など)**がリンゴ酸を乳酸に変換する生化学反応です。

    C4H6O5(リンゴ酸) → C3H6O3(乳酸) + CO2(二酸化炭素)
    

    この反応によって、酸味の角が取れ、味わいはより“丸み”を帯びます。

    • リンゴ酸:2価酸で鋭い酸味(青リンゴ様)
    • 乳酸:1価酸で柔らかい酸味(ヨーグルト様)

    結果として、ワインのpHがわずかに上昇し
    口当たりが柔らかく、全体に温かみのある印象へと変化します。


    2. MLFがもたらす味覚変化

    要素変化の方向代表的な例
    酸味シャープ → ソフトシャブリ(MLFなし) vs コート・ド・ボーヌ(MLFあり)
    口当たり緊張感 → まろやか樽熟と組み合わせるとクリーミーな質感
    香り果実香 → 乳製品系バター、ヘーゼルナッツ、ブリオッシュ
    バランス高酸 → 滑らか酸とアルコールの調和が取れる

    MLFによって生じる**ジアセチル(diacetyl)**が、
    いわゆる「バター香」や「トースト香」の主因となります。
    特にシャルドネやピノ・ノワールで、この香りはスタイルを決定づける要素です。


    3. 安定性への影響——微生物学的側面

    MLFには、味わい以上に重要なもう一つの役割があります。
    それは微生物的安定性の向上です。

    未実施のワインでは、瓶内で偶発的にMLFが起こるリスクがあり、
    濁りや炭酸ガス発生などのトラブルの原因となります。

    そのため、醸造家は以下のいずれかを選びます。

    • MLFを意図的に完了させ、安定化を確保
    • SO₂添加・冷却によりMLFを抑制

    この選択が、スタイルの根幹を決めることになります。


    4. MLFの管理——温度・pH・SO₂の関係

    パラメータ適正条件備考
    温度18〜22℃低すぎると乳酸菌活動が停止
    pH3.3〜3.5酸が高すぎると発酵停滞
    SO₂20mg/L以下過剰だと乳酸菌死滅
    栄養源アミノ酸・ビタミン酵母残渣が栄養供給源になる

    発酵後のシュール・リー(Sur Lie)熟成を組み合わせることで、
    まろやかさと旨味がさらに増すケースも多く見られます。


    5. MLFを行うワイン、行わないワイン

    MLF実施代表スタイル理由
    実施するブルゴーニュ白、赤ワイン全般酸の柔軟化と香味の複雑化
    実施しないシャブリ、スパークリング鋭い酸を保持して清涼感を重視
    部分的実施シャンパーニュ・ブレンドキュヴェごとに酸バランスを調整

    6. テイスティングでの見分け方

    MLFを経たワインは、以下のような特徴を持ちます。

    • 酸味がやや穏やか
    • バター・クリーム・乳製品系の香り
    • 舌触りが滑らか
    • 若干のCO₂欠如(発泡性なし)

    逆に、MLFを行っていないワインは、
    フレッシュで張りのある酸が特徴です。


    まとめ

    • MLFは、味覚と安定性の両面を変える「第2の発酵」。
    • リンゴ酸→乳酸への変換で、口当たりが柔らかく、pHが上昇。
    • バター香(ジアセチル)や旨味の発現に寄与。
    • 管理条件(温度・pH・SO₂)次第で成否が決まる。
    • 醸造家は、ワインスタイルに応じてMLFを選択している。

    次回予告

    次回は、**「樽熟成とMLFの相乗効果」**をテーマに、
    オーク樽内で起こる微生物活動と香りの変化を徹底解析します。



  • ブドウの酸保持と気候条件の関係をさらに掘り下げる

    ブドウの酸は、ワインの“背骨”。同じ品種でも産地や気候で酸の量・質は大きく変わります。 本記事では、酸保持のメカニズム気候条件の科学的背景を整理し、 ソムリエ試験・上級者の理解を一段深める視点で解説します。

    1. 酸はワインの「骨格」と「寿命」をつくる

    酸の種類主な特徴発酵後の残存度
    酒石酸ワイン特有。pH安定化・結晶化の要因高く残存
    リンゴ酸成熟期に減少。MLFで乳酸へ中(MLFで低下)
    クエン酸微量。爽やかさに寄与概ね安定

    酸は味の立体感・熟成ポテンシャル・微生物安定性の要。特に冷涼地での酸保持が品質差を生みます。

    2. 酸が減るメカニズム——温暖化の影響

    • 夜間呼吸の増加:気温が高いほど果実呼吸が増え、リンゴ酸が消耗
    • 過熟:高温・長日照で糖が上がりすぎ、酸とのバランスが崩れやすい。
    • 実務対応:補酸、収穫前倒し、高地・高緯度への移動など。

    3. 冷涼地で酸が保たれる理由

    夜温の低さ昼夜の寒暖差が鍵。昼に糖を蓄え、夜に酸を維持できるため、糖と酸の共存が可能になります。

    図1:昼夜温度差が大きいほど、夜間呼吸が抑えられ酸保持が進むイメージ
    時間(昼→夜→朝) 温度/酸 昼高温 夜も高め→酸消耗↑ 夜温低い→酸保持 酸保持

    高地効果:標高が上がるほど夜温が下がり、同時に日射(短波)が強くなるため成熟を進めつつ酸を保持しやすい環境になります。

    4. 雨と酸の関係

    • 多雨→果粒の希釈・病害リスク↑ → 酸・風味の密度が下がりやすい。
    • 乾燥→凝縮とフェノール成熟が進み、酸も相対的に維持されやすい。
    • 開花期〜着色期の長雨は光合成・温度条件を乱し、糖酸バランスを崩す要因。
    図2:降水が多いと果粒は膨張(希釈)し、酸濃度が下がりやすい
    乾燥 高濃度(酸↑) 多雨 膨張→希釈(酸↓)

    5. 品種ごとの酸保持力

    品種酸保持力備考
    リースリング冷涼地でも高酸・長期熟成型
    シャルドネ産地差が大きい(例:シャブリ vs 温暖地)
    カベルネ・ソーヴィニヨン果皮厚く酸・フェノールの維持がしやすい
    シラー高温だと酸が飛びやすい
    サンジョヴェーゼ高酸系、丘陵・冷却風のある地区に好適

    6. 酸保持のための栽培テクニック

    • キャノピーマネジメント:直射光を適度に遮り果粒温度の上昇を抑える。
    • 収穫時期の最適化:糖が上がりすぎる前に収穫し、酸を残す。
    • 区画選び:北向き斜面・標高差・冷却風の通り道を活用。
    図3:標高が上がると日中は十分な日射、夜は低温で酸保持に有利
    低地:日中温↑/夜温↑ → 酸減 高地:日射◎/夜温↓ → 酸保持 標高↑

    まとめ

    • 酸はワインの寿命と構造を支える基礎要素。
    • 酸保持には夜温・寒暖差・降水・標高・日照角度が重要。
    • 気候変動により酸は減少傾向。産地選定や栽培手法の再設計が進んでいる。

    FAQ

    Q. 温暖地でも酸を保つ方法は?

    A. 標高を上げる、北向き斜面を選ぶ、キャノピーで遮光、収穫を前倒し、適切な補酸を組み合わせます。

    Q. 補酸とは何ですか?

    A. 醸造中に酒石酸やクエン酸等を添加して味を整える手法。国・地域ごとに法的制限があるため、最新規定を確認してください。


    次回予告:「MLF(乳酸発酵)を味と安定性の両面から解剖する」——リンゴ酸→乳酸で何が変わる?

  • ソムリエ必修!ワイン産地が“30〜50度”に集中する理由を徹底解説


    ワイン用ブドウ栽培はなぜ“30〜50度”の緯度帯なのか?

    世界のワイン産地を地図で見ると、多くが北緯・南緯の30〜50度に集中しています。 なぜこの“緯度の帯”が、ワイン造りにとって理想的なのでしょうか? 本記事では、気温・日照・寒暖差・降水といった科学的背景を整理し、ソムリエ試験や上級者向けに解説します。

    1. 緯度30〜50度帯の気候的特徴

    • 気温のバランス:ブドウは年間平均10〜20℃程度が最適。30度以下の熱帯は暑すぎ、50度を超えると冷涼すぎて成熟しにくい。
    • 四季のリズム:温帯気候の季節サイクルにより、休眠・萌芽・成長・収穫が安定して行われる。

    2. 日照と成熟の関係

    緯度30〜50度は、日射量が十分でありつつ強すぎない絶妙なバランスです。 特に高緯度では夏の日照時間が長く、成熟を助けます。

    • 十分な日照時間:光合成を促し糖度を上げる。
    • 寒暖差:昼間に糖を蓄え、夜間の冷え込みで酸を保持。酸と糖の両立が品質を高める。

    3. 降水・水分ストレスの影響

    適度な水不足は、果実の凝縮感やポリフェノール生成を促します。 逆に水が多すぎると房が肥大し、風味が希薄になります。

    この緯度帯は排水性の高い土壌が多く、ブドウ栽培と好相性です。

    4. 代表的な産地例

    • フランス(北緯45度前後):ボルドー、ブルゴーニュ
    • アメリカ(北緯38度前後):ナパ・ソノマ
    • チリ・アルゼンチン(南緯30〜35度):アンデス山脈の乾燥・高日照条件
    • オーストラリア(南緯35度前後):バロッサ・マーガレットリバー
    • 日本(北緯35〜43度):山梨・長野・北海道

    5. 気候変動と“緯度のシフト”

    地球温暖化により、従来の産地では酸保持が難しくなりつつあります。 一方でイギリスや北欧など高緯度地域では、スパークリングを中心に高品質ワインが誕生。 産地地図は今まさに書き換えられつつあります。

    まとめ

    • ブドウ栽培に最適な帯は北緯・南緯30〜50度。
    • 気温・日照・寒暖差・降水が理想的に整う。
    • 気候変動により、この帯は北や南に拡大している。

    FAQ

    Q. なぜ30〜50度より外では難しいの?

    A. 熱帯は高温多湿で病害リスクが高く、寒冷地は果実が熟しにくいためです。

    Q. 気候変動で新しいワイン産地は増える?

    A. はい。イギリス、スウェーデン、カナダなど、50度を超える地域で新たな高品質ワインが造られています。


    次回予告:ブドウの酸保持と気候条件の関係をさらに掘り下げます。

AIソムリエ / Deeper into Wine

WSET L3 & ソムリエ資格保有。
元ワインバーオーナーとして10年間培った
現場経験と科学的データで解説します。

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